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精米

日本酒玄米の表層部や胚芽には、たんぱく質、脂肪、ミネラル、ビタミン等栄養成分が沢山含まれています。それらの成分は麹カビや酵母の栄養となりますので、必要な成分なのですが、あまり多すぎると製成酒に色や苦み、くどみを付けてこうみのバランスを崩してしまいます。そのため、お酒の原料として使うときは精米機を使って玄米の胚芽や表層部を削り取り、たんぱく質、脂肪、ミネラル、ビタミン等の成分を少なくした白米を使用します。
家庭の飯米は、八部搗(と)きといって、精米により米粒の8%程度を糠として取り除いた白米(精米歩合92%)ですが、清酒を造るときは、精米歩合70%程度まで磨いた白米を使用します。一般に清酒の原料として使われる白米の精米歩合は低ければ低い程、口当たりが柔らかく香味の調和がとれた良い清酒ができるといわれております。吟醸酒のように香りが高く、淡麗な清酒(日本酒)の製造には精米歩合が40%~50%といった白米が使用されます。

洗米と浸漬

日本酒精米した白米は、大量の水で洗い表面に付いている糠(ぬか)をきれいに取り除きます(洗米)。洗米中に白米はその重量の10~15%の水を吸収しますが、消化の良い蒸し米を得るためには、まだ不足で、さらに水に浸け(浸漬)て汲水させます。
この米に水を吸わせるための浸漬時間は米の品質や精米歩合の違いによって大変違います。浸漬時間は短いもので10分程度から、長いものになると20時間位まであり、その時間を幾らかにするかは、担当者の腕の見せ所でもあります。洗米、浸漬がうまくいって、良い蒸し米がえられるかどうかは製麹、酒母、醪などの工程を順調にもっていくためのポイントとなります。
浸漬を終えた米は水切りをして余分な水を除きます。

日本酒清酒(日本酒)の麹は、蒸米にカビの一種である黄麹菌を生やしたものです。この麹は米のでんぷんやたんぱく質を分解する酵素を豊富に含んでいます。麹造りの操作は、優れた清酒を得るためにこれらの酵素がバランスよく生産されるよういろいろな工夫が凝らされています。麹の造り方は、古くから行われている手造りによる方法(在来法)と、機械を使って自動的に造る機械製麹法があります。最近は、機械製麹もかなり使われていますが、中小の製造場では今でも、在来法による麹造りが行われています。在来法は、麹を造るとき蒸米を入れる木製の箱の大きさによって、蓋麹法(ふたこうじほう)、箱麹法、それから箱を使わないで箱の変わりに床を使い全量を入れる床麹法に分けられます。

蒸し

日本酒浸漬後水切りをした白米は消化しやすくするために蒸し器にいれて、40~60分間蒸します。蒸し器は甑(こしき)といいます。下部の釜で生じた蒸気は甑の底の穴から甑の中に入り米の層を上昇して蒸しが行われます。現在、連続蒸米機もかなり使用されるようになりましたが、中小の製造場では今でも従来の甑を使っているところがたくさんあります。

酒母(しゅぼ)

麹と蒸米を水に投入し酒母菌を接種して酒母を造ります。
酒母はお酒の母という意味です。お酒をつくる元になるもので酛(もと)ともいいます。酒母づくりの工程は醪の前の工程ですが、麹と蒸米と水の混合物の中に沢山の酵母が生息している状態は、全く醪と同様です。従って、酒母は小規模の醪であるいうこともできます。酒母の造り方は、いろいろありますが、乳酸菌の自然増殖を導いて乳酸酸性の環境をつくり腐敗菌等の汚染を防ぎながら清酒の酵母の増殖をはかる生酛系酒母と酒母を仕込むときに予め乳酸を添加して、雑菌の増殖を押さえながら酒母の育成をはかる速醸系酒母の二つに大別されます。山廃酛のような生酛系酵母は出来るまでに30日以上もかかるのに対して、普通速醸酒母は、約二週間と短期間でできるうえ良い酒母を比較的簡単に造ることができるので最近では大半が速醸酒母になっております。 速醸酒母は、麹1に対して蒸米2を水の中に投入し、適量の乳酸を加えて酸性にし、さらに純粋に培養された酵母を添加して仕込みます。酒母の初期は、麹が蒸米に作用して米のでんぷんをブドウ糖まで分解するとともに、たんぱく質の分解物であるアミノ酸等も生成されます。接種された酵母はそれらを栄養分として体内に取り込み発芽を繰り返し数をふやしていきます。仕込み後約2週間で、酒母ができあがりますが、そのとき、酒母1g中に1億個以上の酵母がいなければなりません。酒母造りのポイントは、腐敗につながる雑菌に汚染されないようにしながら、酵母菌を多数育成するところにありますが、目に見えない細菌や雑菌が相手ですので、常に清潔さが要求される工程です。

醪(もろみ)

清酒醪は、酒母に蒸米と米麹に仕込水を加えて造ります。
醪を渋袋(しぶくろ)でこしたものが清酒です。醪(もろみ)の香味の良し悪しが、そのまま清酒(日本酒)の品質に結びつきますから、醪造りは非常に大切な工程です。酒母を大きなタンクに移し、蒸米と米麹と仕込水を投入します。この操作を仕込みといい、第1日目の仕込みを初添え(はつぞえ)といいます。
2日目は、蒸米等を入れるのを止め、保温しながら、酒母からきた酵母が増殖し、さらに数を増やすのを待ちます。これを踊りといいます。
3日目の仕込みを仲添(なかぞえ)、4日目の仕込みを留添(とめぞえ)といいます。このように、清酒醪は、初添、仲添、留添と3回に分けて仕込みます。これを3段仕込みといいますが、この方法は、清酒独特のもので、古くから行われており、開放発酵でありながら雑菌汚染による品質の低下や発酵停止を防ぐ非常に有効な方法であります。
留添えは8度位に仕込みます。醪は、発酵熱により、1日約1℃位ずつ温度が上がりますから、7~8日もすると最高の15~16℃まで達します。また仕込み後、2~3日もすると、もろみの表面には、泡がでてきます。やがて、泡はだんだん多くなり、醪の表面をおおい、次第にタンクの上のほうに上がってきます。5日目頃に泡は最高に達しますが、これを高泡といいます。高泡は5~6日続きますが、もろみの中のアルコール分が多くなるにつれて泡はだんだん低くなり15~16日には泡は全く消滅し、再び醪の表面が見えるようになります。醪が成熟したのです。

上槽、濾過、調合

アルコール分が18~19%となり発酵が終わった醪は、圧搾機にかけて液状部分の清酒と固形部分の粕(かす)に分けます。これを上槽(じょうそう)といいます。渋袋(しぶくろ)に醪を7~10L位入れ、槽(ふね)とよばれる細長い箱の中に積み上げ、上から圧搾機で徐々に圧力をかけて搾ります。翌日、槽直しといって、袋を積み替えて、さらに圧搾します。搾った酒は、始め、渋袋の間から、醪がにじみ出てくるので、白く濁っています。これをタンクにいれ静置すると、濁りがオリとなって底に沈みます。オリが下がったところで、上澄みをとります。

火入れ、貯蔵、出荷

新酒では米麹の酵素がまだ生きていて、でんぷんやデキストリンをブドウ糖にまで分解してしまいますから、そのままにしておきますと酒質がどんどん変わってしまいます。
また火落ち菌などにより、白濁したり、香味が悪くなってしまう心配もあります。それらを防ぐために、一度、新酒を65℃前後に加熱し、殺菌するとともに、酵母の働きを停止させます。それを、火入れといいます。特に現代は、清酒には防腐剤や保存料といったものは一切使いませんので、火入れは入念におこないます。火入れをしたお酒は、冷蔵庫や壁を厚くして外気の温度変化の影響をできるだけ少なくした貯蔵庫のタンクに入れて静かに貯蔵します。お酒は貯蔵タンクの中で熟成が進み、やがて新酒時には見れなかった旨味やまろやかさがでてきます。
貯蔵庫の中のお酒は、適度に熟すのを待って、濾過をした後で、加水してアルコール分を調整し、ビン詰めされます。
ビン詰めは、熱酒ビン詰めといって、65℃前後に加熱殺菌してからビンに詰めます。ビン詰めされた清酒は、ラベルを貼り製品として市場に出荷されます。

本ページの文面につきましては、
/新版 お酒の商品知識入門/より抜粋しています。
発行者 関 忠禮